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オピニオン
サステナビリティの探求
マテリアリティは、すべての企業の「経営の羅針盤」
岩崎雅美(コンサルタント)
「マテリアリティ」と聞くと、上場企業が開示のために取り組むもの、あるいはSSBJ対応が必要な大企業の話、と感じる方もいるかもしれません。しかし本来、マテリアリティは企業規模や上場・非上場を問わず、あらゆる企業に関係する経営テーマです。なぜなら、マテリアリティ特定の本質は、「自社が持続的に成長するために、何をマテリアリティとして捉え、どこに力を注ぐか」を明らかにすることだからです。
大切なのは、「何でもやる」ことではない
企業を取り巻く課題は、人材不足、気候変動、人権、労働安全、ガバナンスなど多岐にわたります。すべてが大切だからこそ、優先順位をつけなければ活動は散漫になり、経営資源も分散します。マテリアリティの特定とは、数多くの課題を並べることではなく、自社の事業や組織に与えるリスクと機会、社会・環境への影響を見極め、重点的に取り組むテーマを選ぶことです。
たとえば、人材確保が事業継続に影響する企業と、原材料調達における環境・人権リスクが競争力に直結する企業とでは、優先すべき課題は異なります。世の中で注目されているテーマをそのまま掲げるのではなく、自社のビジネスモデルやバリューチェーン、地域との関係、将来の事業環境に照らして考えることが重要です。
経営の暗黙知を、共通の判断軸に変える
多くの企業では、経営者や現場の従業員が「このままでは将来の成長に支障が出る」「ここに次の事業機会がある」と感覚的に捉えていることがあります。しかし、それを会社として共有できていないことが多くあります。特にサステナビリティのテーマになるとよりその課題は顕著です。マテリアリティの特定は、こうした暗黙知を言語化し、全社の共通認識に変えるプロセスでもあります。
マテリアリティが共有されれば、経営計画と非財務面の取り組みを結びつけ、目標やKPIに落とし込むことができます。各部署は同じ判断軸で行動しやすくなり、取締役会も進捗を確認できます。つまりマテリアリティは、サステナビリティ活動の一覧表ではなく、経営戦略、リスク管理、日々の意思決定をつなぐ骨格なのです。
取引先から「選ばれる理由」にもなる
マテリアリティが重要なのは、社内のためだけではありません。サプライチェーン全体で環境や人権のリスクを管理する動きが広がり、取引先に方針、管理体制、目標、実績を求める企業が増えています。たとえば、主要顧客が実施するESG調査やサプライヤー評価においては、自社がどのようなマテリアリティを特定し、環境・人権・労働安全などの課題にどのように取り組んでいるかの説明が求められるケースが増えています。問われるのは、「自社にとって何が重要で、どう管理し、改善しているか」を説明できるかどうかです。体系立った取り組みは、取引先への説明責任を果たし、信頼や事業継続力を示すことにもつながります。
小さく始め、定期的に見直す
最初から精緻な分析や大規模なプロジェクトが必要なわけではありません。まずは自社を取り巻く課題を洗い出し、事業へのリスクと機会、社会・環境への影響という視点で整理する。経営層や関連部署、必要に応じて顧客や有識者の意見も取り入れ、優先課題を絞る。そして、経営計画や既存の活動と結びつけ、目標とKPIを設定する。この基本を押さえるだけでも、経営上の視界は大きく変わります。
企業理念や大切にする価値観は、簡単には変わらないものです。一方、マテリアリティは、時代背景や事業環境に応じて見直していくもの。だからこそ、一度決めて終わりではなく、経営計画と両輪で運用し、変化を捉えながら更新していくことが大切です。
マテリアリティは、規制対応のための言葉ではありません。自社らしい成長を続けるために、「何を守り、何を変え、どこに挑むのか」を定める経営の羅針盤です。規模の大小にかかわらず、将来を自ら選び取ろうとするすべての企業にとって、今こそ向き合う価値があります。サステナビリティの視点も踏まえて、改めて自社の価値に向き合いたいと思われたら、ぜひご相談ください。
マテリアリティの特定および開示に関してより詳しい情報をお知りになりたい方・ご支援を希望される方は、以下のリンクからお問い合わせください。
