知見・事例
SSBJ対応の最新動向(後編)
有価証券報告書100社調査から見えた、3つの実務ポイント
SSBJ基準に基づく開示の適用開始が近づく中、企業はどのような取り組みが必要でしょうか。前編では、現在の有価証券報告書上の開示状況から現在地とその課題を確認しました。後編では、SSBJ対応を最終化する際に重要となる「重要性判断」「財務的影響の説明」「ERMとの統合」の3点を解説します。
この記事のポイント
- SSBJ対応で最終化前に確認すべき論点
- 重要性判断の考え方
- 財務的影響を説明するポイント
- サステナビリティリスクとERMを統合するポイント
SSBJ対応で今取り組むべき3つのポイント
今回の分析を通じて、企業が今後SSBJ対応を進めるうえで重要となるポイントが3つ見えてきました。それは、「重要性判断」「財務的影響の説明」「ERMとの統合」です。
1. 重要な情報とは何かを見極める
SSBJ基準では、重要性がない情報は開示する必要がありません。しかし実際には、先進企業の中には30ページを超える開示を行っているケースも見られます。開示量が増えるほど、本当に重要な情報が埋もれ、読者に伝わりにくくなる可能性があります。場合によっては読んでもらえない危険性すらあります。
情報量を増やすことが目的ではなく、投資家の意思決定に影響を与える情報を適切に伝えることが本来の目的です。
改めて、自社のビジネス・モデル、重要な資源やサプライチェーン、提供価値に大きな影響を与えるテーマは何か。その視点からサステナビリティの重要性を見極めることが求められます。そのためにも、全体像を把握する経営層の関与は欠かすことができないと考えています。
2. 財務的影響は定量化だけでなく定性的説明も重要
財務的影響の定量化は、多くの企業にとって容易ではありません。実際に今回の調査でも、「不確実性が高い」「複数の要因が影響するため定量化が困難」と説明する企業が多く、ほとんど定量的な開示は見られませんでした。実務支援の現場でも、有価証券報告書発行までの限られた期間で財務的影響を高い精度で定量化することは容易ではないと感じられます。
そのため、なぜ重要と判断したのかを定性的に説明する能力がより重要になると考えます。
定性的な要素としては、企業固有の事情や業界特性、依存する資源や取引先との関係性などを踏まえた説明が求められます。その際、一般的な市場データや定型的なリスク評価にとどまらず、自社独自の文脈に合わせて結論付けることがより大切になります。そのためには、担当部門だけでまとめるのではなく、事業部などの関連部門とじっくり対話することが重要です。
3. サステナビリティリスクをERMに統合する
今回の調査で最も課題として浮かび上がったのが、リスク管理の整合性でした。サステナビリティのリスクと全社リスクマネジメント(ERM)が別々に存在しているように見える開示は少なくありません。しかし、投資家が見ているのは、そのリスクが本当に重要であるならば、経営としてどのように管理されているのかという点です。
サステナビリティを特別なものとして扱うのではなく、既存の経営管理プロセスやリスク管理プロセスの中に組み込んでいくことが重要です。これまで十分に議論されてこなかった、リスク管理プロセスとサステナビリティの整合性に関する議論や、リスク管理プロセス自体を経営として重視する視点が、今後より求められるのではないでしょうか。
SSBJ対応を経営高度化の機会に変える
今回の100社分析から見えてきたのは、多くの企業が着実に準備を進めている一方で、SSBJ対応の本質はまだこれからだということです。
SSBJ対応は単なる開示対応ではありません。
自社にとって重要なサステナビリティ課題を見直し、経営や事業とのつながりを整理し、ガバナンスやリスク管理に組み込んでいくプロセスそのものが、サステナビリティを経営へ組み込むという経営自体の高度化につながるのです。
制度対応として取り組むのではなく、自社の将来価値を考える機会として活用できるか。
その姿勢が、今後の企業価値や投資家との対話の質に差を生むと考えられます。
クレアンでは、SSBJ基準への対応支援をはじめ、マテリアリティ見直し、ガバナンス・リスク管理体制の整備、情報開示支援など、企業のサステナビリティ経営の高度化を総合的に支援しています。ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
SSBJ対応に向けて、重要性判断の整理、財務的影響の説明、ERMとの統合、有価証券報告書での開示方針に課題をお持ちの方は、ぜひクレアンまでご相談ください。
