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プロが「30分間でサステナビリティレポートを読む」方法(前編)
伊藤佳代(コンサルタント)
これまでに1,000社以上のサステナビリティレポートを読み、企画・制作支援歴20年のベテラン社員が、30分間で1社のサステナビリティレポートの全体像を把握するための読む方法を伝授します。どこから優先的に、どのような観点で読んでいるか、少し辛口な理由・コメントを交えながらお話しします。
はじめに
みなさんは、サステナビリティレポート、どのような立場で読んでいらっしゃいますか?
例えば大学生。これから入社試験を受けるため色々な情報収集をしようと読んでいらっしゃる方。例えば機関投資家。AI情報や評価機関の指標を踏まえつつも、実際の生データを読んでいる場合。そして、企業のサステナビリティ関連部署の皆様。ライバルである同業他社がどのように開示しているのか。・・・などなど、さまざまな立場の方が、それぞれのニーズに沿って読まれていると思います。
サステナビリティレポートといえば、昨今では評価機関対応のため、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)のそれぞれの情報量が多く読み応えのある開示をしている日本企業も多く見られます。開示情報量が多くなることは喜ばしいことですし、やはり充実した開示内容・開示ボリュームを持つ企業がさまざまなレポートの賞を受賞し、高い評価を得ているのも事実です。しかし、一方で全部を網羅的に読むには相当な時間と労力を要します。もっと端的にその企業の全体像を掴みたい、その企業が何を考え、何を拠り所として、どこにチカラを注いでいるのかを的確に、効率よく読み解きたい、という読者もおられるのではないでしょうか?
そこで今回は、私がこれまで数多くのレポート(サステナビリティレポート)を査読してきた中で、いかに「素早く」「効率よく」「的確に」その企業の開示全体像をつかむか、そのコツ・レシピをお伝えしたいと思います。名付けて“プロが伝える「30分間でレポート全体像を掴む査読方法」”です。
読む順番
30分間で効率よくその企業の特徴を捉えるには、読む順番が非常に重要です。私は以下の順番で査読しています。
1. もくじ(webの場合はサイトマップ)
2. トップメッセージ/トップコミットメント
3. 第三者意見
4.その他(編集方針/あとがき、個別の注力記事など)
以下にそれぞれの内容のポイントを解説します。
1. もくじ/サイトマップ
まず、もくじを眺めて、冊子全体の構造や量を頭に入れます。ほうほう、この企業はトップメッセージが後半に来ているんだ、とか、特集に20ページも割いているんだ、とか(ただしweb開示のみの場合は実際にそのページに行ってみないと量が測れません)。
ここでのコツは、「ESG要請事項」と「それ以外」を頭の中で振り分け、「それ以外」=つまり自由演技部分で何を一番に主張しているかを読み解くことです。私のような読者にとって、もくじのタイトル付け、タイトル表記は、こうした理由からも重要です。もくじを見ただけで何を言いたいか伝わるタイトルなのか、タイトルだけでは何が書いているのか不明瞭なのか、あるいはごく一般的なタイトルに抑えているのか。webならばサイトマップの構造がわかりやすく整理されているか、などです。
加えて、企業によってはE(環境)パートだけが独立したサイトを形成していたり(組織全体から何かの理由で環境だけ独立=環境のガバナンスが効いていないのかしら、等)、G(ガバナンス)の情報が極端に少なかったり(開示できない不都合な理由があるのかも)、S(社会)のパートだけマネジメント情報が極端になかったり(会社として取り組んでいないのかも)等、情報開示全体を構成する上でのいびつさ、アンバランスさなども注意して見ています。
2. トップメッセージ/トップコミットメント
次に、会社の文字通り企業の「顔」であるトップメッセージを読みます。トップメッセージは、その会社の注力ポイントや将来への展望が分かり、またそもそも情報開示への姿勢も読んで取れるため優先的に読みます。「サステナビリティレポートのどの部分を注目して読みましたか?」等の読者アンケートなどでも、トップメッセージは1位もしくは上位に入る、注目度の高い箇所です。
観点としては、まず、トップの「生の声」が掲載されているものなのか、それとも誰かゴーストライターが書いて、周りの役員や事務局によってたかって「(落語の)目黒のサンマ」にされていないか=骨の無い無難な内容になってしまってないか、かつ、あれもこれもと総花的な内容になっていないか、等を、その企業の本気度を推測しながら確認します。サスレポにおいて他のページは、ある意味「結果の開示」であるわけですが、トップメッセージや、役員メッセージなど、その組織の経営の責任者の記事については、どのような形式を取ってトップの「本音」を引き出し、その組織の未来像を描いて語っているか、その手法やプロセスに注目して読み進めます。
例えばインタビュー記事や対談形式で、少なくとも4ページ以上の分量を割いている場合は比較的「生の声」率が高いようですが、反対に1ページ以下の場合は「目黒のサンマ率」が高くなります(感覚値です)。見分ける方法の一つとして「私は」で始まる文章があるかどうか、いわゆる「I(アイ)ステートメント」の有無があります。代筆者が書く場合は「わたしたちは」「わが社は」と書く場合が多いため、Iステートメントがあり、社長ご自身の言葉や経験に基づいた組織の未来が語られていると「生の声」であると捉えることができます。
ごく稀に、その前の年とほぼ変わらない内容が掲載されている、という由々しきこともあり、時間の許す範囲で、トップメッセージだけは同じ企業のレポートを2~3年分読むことも多いです。トップメッセージは、その企業のサステナビリティ情報開示のスタンスや熱量が分かり、経年変化を見ることでさらに興味深い発見があります。また、実際にトップメッセージが誘導する該当ページ(本年の注力分野、特集記事など)を、ここから直接読みに行く場合もあります。
透明性のあるサステナビリティレポートに関してより詳しい情報をお知りになりたい方・ご支援を希望される方は、以下のリンクからお問い合わせください。
