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プロが「30分間でサステナビリティレポートを読む」方法(後編)
伊藤佳代(コンサルタント)
これまでに1,000社以上のサステナビリティレポートを読み、制作支援歴20年のベテラン社員が、30分間で1社のサステナビリティレポートの全体像を把握するための読む方法を伝授します。どこから優先的に、どのような観点で読んでいるか、少し辛口な理由・コメントを交えながらお話しします。
読む順番(前編からの続き)
3. 第三者意見
さて、もくじで全体構造を見、トップメッセージで経営者(トップ)の視点や開示への熱量を測ったところで、次に読むのは第三者意見です(注:第三者保証(書)ではなく、社外の意見やコメントが掲載されている箇所です)。第三者意見まで読んだら、あとはその企業によって読む箇所はさまざまですので、私のレシピ伝授はここまでがデフォルトです。
開示する企業は、第三者意見を「誰からもらうか」については実は相当な吟味をしています。「この分野で権威ある方にお願いしたい」「でもあまり辛口なことを言われても困る」「できれば褒めて欲しい」「改善できそうな部分を前向きなご意見として頂きたい」などの企業サイドの本音や要望(もちろん企業によって様々ではありますが)を受けて「書いてくれそうな人」を選び、依頼して書いてもらっています。
第三者意見は、レポートの他のページが完成し、意見をもらうための根拠が揃った状態、レポートの完成直前の状態で初めて外部に意見を依頼できるプロセスであり、意見者の原稿作成期間や、原稿提出後の企業との質疑などのやり取りなども含むと、かなり手間も時間もかかる箇所です。書く側(有識者)は、渡されたレポートの最終段階のデザイン原稿をほぼ網羅的に読み、飴鞭を使い分けつつ、自分の専門分野や得意分野の経験と知見を以て、慎重に言葉を選び、推敲の上で原稿として企業へ提出くださいます。さらに内容について企業と有識者間でやり取りがある場合もあり、原稿が確定した後も、デザインや印刷という工程を経て掲載となります。
以上のような経緯がありつつも、それでも「第三者」からの意見として、組織とは独立した意見として開示しているからこそ、私が査読する際にはトップメッセージの次に注目し熟読する箇所です。なぜか。一番の理由は単純で「企業にとって不都合な真実が書かれているから」です。第三者の指摘は、(企業側の要望で、ある程度厳しい指摘が丸められている場合もあったりしますが)社内からは誰も指摘することができない、あるいは指摘したとしても企業から外部へ発信するレポートに掲載されることの無い指摘です。
と同時に、例えば厳しい指摘があったとしてもそれを「掲載・開示」することに踏み切った企業の開示姿勢が推測できるページです。企業によっては「第三者意見を受けて」という企業サイドの「第三者意見を真剣白刃取り」みたいなすごい記事を掲載している企業もあります(こうなるともうこの段階でその企業のサスレポの評価は私の中で爆上がりします)。ただでさえ手間のかかる「第三者意見」を掲載した上に、さらに手間をかけて、社外からの指摘にどう応えるか、またはどこが応えるのは困難なのか、担当責任者が答え、社内承認を取った上で掲載するという手間と英断に踏み切ったわけですから。サステナビリティ推進の軸の一つであるステークホルダーとのエンゲージメント(対話)の極み、好事例だと感じます。
第三者意見までを読んだら、この先は実際に第三者が指摘した箇所を読みに行きます。その指摘は事実か。私が読んだ際に同じように感じるかどうか。すべてを読んだ上で寄稿した第三者の視点を追体験することでレポート全体を俯瞰する感覚を得ることができます。第三者意見では、たまに「褒めちぎって終わり」という意見も見られます。このような場合、第三者意見はあまり参考にせず、他に社外の声(記事ではなくコメントとして)を掲載している箇所を探します。
4. その他(編集方針/あとがき、個別の注力記事など)
第三者意見までを熟読した後は、企業に応じて査読先はさまざまですが、「編集方針/あとがき」などは、たまに事務局の「制作苦労話・裏話」や「ここは頑張ったから読んで欲しい」という「想い」「本音」が伝わって来る文章に出会うことが多いので、レポート全体の根底を流れる編集サイドの熱量を推し量るために、なるべく読みに行くようにしています。
というわけで、実は編集方針はプロとして注目して読みに行くことが多いのですが、意外と「お決まり」の文言で終わってしまっておりあまり熱量が感じられない場合が多く、もったいないと思っています。編集方針は、もっと企業の注力ポイントや哲学が語られるべきです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?私の査読方法はかなり斬新ですし、「そんな手があったか」という裏技的な読み方であるようにも思います。
大切だと思うのは、細かい枝葉の情報に振り回されずに最初から効率よく全体観を掴むことです。そのための手がかりが「もくじ/サイトマップ」であり「トップメッセージ」であり、「全ページを読んで寄稿された第三者意見」です。これらを優先的に読みに行くことで、開示情報全体を俯瞰することに努めます。また「第三者意見」からは、指摘された改善点=ネガティブ情報自体に加え、その指摘への企業の向き合い方・対処方法から企業の開示スタンスを感じとっています。
さらに、年々情報開示量が増加している中では、情報開示自体の「構造美」が試されるというか、いかに読者にわかりやすい構造や媒体をスッキリとした形で提供できているか等も大切な観点です。
30分間でサステナビリティレポートの全体像を読み解くための私の査読方法は以上です。今後、皆様の査読のヒントとなれば幸いです。
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